今訳している本のタイトルは「ATroublesome Inheritance」。既に訳に着手して話が流れて仕舞った方がいらっしゃるようで、その抄訳はここのサイトで読める。タイトルを直訳すれば「厄介な遺伝」と云った意味になる。趣旨としては、人類の社会構造や文化は人種による遺伝的差異に影響を受けていることが近年の研究で明らかになってきているのであって、<strong>人種</strong>というものは生物学的に言って存在することは明らかで、遺伝学的基礎を持つものである、という主張。つまり、例えばジャレド・ダイヤモンド銃・病原菌・鉄 」に依るように社会構造の差が完全に学習された文化と環境だけによると考えるのは誤りだ、という内容。そういった見地から、スティーヴン・J・グールドの「人間の測りまちがい―差別の科学史 」なども槍玉に挙がっている。
こういう内容(右寄りの論旨)なので、私のデビュー作「カニの不思議」を刊行した青土社からは刊行を断られてしまい、目下版元を物色中、という次第。

今日やった所は遺伝的浮動という現象によって淘汰圧がなくてもある遺伝子の頻度が0%になったり100%になっりするという内容のページで、本を通じての論旨が少々派手なので乱暴な議論が為されていると思われがちだが、生物学の常識を踏まえて細かく議論を積み重ねているので、そういう意味では硬い本と言える。
まぁ、私の訳すスピードでは、終わるまでに4~6か月はかかるので、その間に版元が決まればヨシと云うことで…。